消費増税反対論

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投稿者:       投稿日時:2013/11/19 12:14      
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はじめに:2012年8月10日、消費税率の引き上げを柱とする社会保障・税一体改革関連法案は成立した。法案成立によって消費税率は現行の5%から2014年4月に8%、15年10月に10%へと引き上げられる。

さて、消費税率引き上げの目的は社会保障改革と財政再建のための財源確保であるが、本当に消費税で良かったのだろうか。他の選択肢はなかったのだろうか。この論文では、消費税がどれだけ無理のある税制であるかを検証しつつ、社会保障改革のための消費税の代替となる財源について、私の考えるところを論述していく。学生である故、稚拙な分析、文体であることは重々承知である。ご容赦いただきたい。批判やアドバイス等さまざまなご意見をお待ちしています。

 

 

 

まず、消費税の国税滞納額について考察する。国税庁HP『平成23年度租税滞納状況について』によると、新規発生滞納額は6,073億円となっている。そのうち消費税は3,220億円である。これは滞納額全体の約53%に当たる。実に全滞納額の半分以上が消費税なのだ。こういった話をすると、「益税があるからではないか」という議論になる。益税とは、会社設立後2年間は消費税を納めなくて良いとか、3年目以降でも売上が1千万円を超えない会社は消費税を納めなくて良い。したがって消費者が納めた消費税がその会社の利益になっているということである。しかし、ここで重要なことは、こうした免税店でも仕入れにおいては消費税が転嫁されるという点である。斎藤貴男「『消費税のカラクリ』P53図表6、免税事業者が課税事業者となる場合の消費税の転嫁」によると、売上が2500万円から3000万円の会社は「ほぼ転嫁できる」が54.6%、「完全な転嫁はできない」が45.4%である。そのうち「一部しか転嫁できない」が19.1%、「ほとんど転嫁できない」が26.3%である。一方売上が1千万円以下の会社は「ほぼ転嫁できる」が42.7%、「完全な転嫁はできない」が57.3%である。そのうち「一部しか転嫁できない」が22.3%、「ほとんど転嫁できない」が35.0%である。こうして見ると、仕入れでは消費税を払っているにもかかわらず、売り上げが低い会社ほど店頭では消費税の価格転嫁が出来ず、自腹を切っている、あるいは滞納していることがわかる。益税が全くないとは言えないまでも、消費税の価格転嫁が出来ず、悪意のない滞納が多くを占めると言えるので、全てを益税でまとめてしまうのは好ましくない。この点は消費税が無理な税制という所以の一つである。

 

 

 続いて、消費税の過大な事務負担について考察する。消費税は割と簡素な税制だと言われることがままあるが、実際はそうでもない。むしろ煩雑だとも言える。その例が「仕入れ税額控除」である。仕入れ税額控除とは、一言で言うと複利を防ぐための制度である。例えば、原材料製造業者が2万円の売上を得た場合、その5%の1000円が消費税となる。次に完成品製造業者が5万円の売上を得た場合、消費税は2500円となるのだが、仕入れの段階で1000円の消費税は既に支払われている。したがって2500円-1000円=1500円が完成品製造業者の消費税となる。これが仕入れ税額控除である。事業者としては節税の機会となるので、この制度を活用したい。しかし、仕入れ税額控除を受けようとすれば課税仕入れ等の事実を証明できるような帳簿や請求書を残しておかなければならない上、記載事項の量も半端ではない。斎藤氏によれば、「帳簿には課税仕入れの『相手方の氏名または名称』『年月日』『内容』『対価の額』」などなど、その他にも多くの記載事項が必要だ。自営業者のように税に関する専門要員を雇う余裕のない事業者としては、かなりの労力を必要とする。こうした点で、消費税は零細企業負担が大きく、これ以上税率が引き上げられた場合の彼らの廃業リスクは計り知れない。廃業が増えればその分国が救済する人も増えるわけで、財政の負担も当然増える。これは本末転倒ではないか。この他にも輸出取引においては免税される輸出戻し税という大企業優遇の側面を持つ制度や、軽減税率などを採用していないが故に日本の消費税率5%はヨーロッパ基準だと10%に相当するという試算もあり、日本の消費税率は低いと一概には言えない。こうした点からも消費税には問題が多いと言える。以上が消費税増税に反対する理由である。

 

 

 

 

ここからは消費税の代替となる財源について論じていく。私の考えるところは、所得税の累進税率引き上げに伴う再分配の強化、法人税の強化、国債発行による成長分野への投資に伴う経済成長によっての税収の自然増である。

 

 まずはなぜ所得税の累進制強化なのか。それは社会保障改革という観点から考えた場合、相対的貧困率の縮小が必須だからである。『厚生労働白書』の相対的貧困率の国際比較によると、日本の相対的貧困率は14.9%で、OECD平均の10.6%を超えている。順位で見てもメキシコ、アメリカ、トルコに次いで27位と低い順位である。単純に考えれば、貧困率が高い場合は当然貧困者に対する公的支出も増加すると考えられるし、そうした人々に手を差し伸べなければ社会不安も増大するだろう。最悪の場合には暴動等によって国家そのものが立ち行かなくなるかもしれない。よって公的支出のための多くの財源を必要とする。しかし、貧困者自身は貧困ゆえに自らお金を払って生活をしていくのは基本的に困難である。または生活はできてもお財布事情がぎりぎりのため、消費を手控え、経済的にも良い影響はもたらさない。さらに、所得再分配の不平等は、特に日本の場合は教育費が多くかかるので、貧困家庭の子供の教育機会を奪ったり、能力を発揮する機会を奪うことになるので、社会の潜在的生産性を奪うことにもなりかねない。要するに、相対的貧困率が高いということは必然的に国家の負担も大きくなるので、財源が必要だが、貧困者層はそもそもお金がないから税金も微々たる額しか払えない。すなわち国の財源としても大きな額にはならないと考えられる。したがって累進制を強化することによって富裕者層に多く負担をしてもらい、再分配することで格差を縮小し、格差を脱した者は最初に恩恵を受けた見返りを税金として負担することで貧困者に分配するという社会全体でお互いを支えあうシステムを確立する必要がある。そのために累進税率の強化は必須である。

 

 

 続いて法人税の強化についてである。日本の法人税率は国際的に高いと言われるが、本当だろうか。また、近年の日本の法人税率は企業の国際競争力を高めることや、企業の海外流出を止めることを主な理由に緩和傾向であるが、法人税率を緩和することで競争力を高めたり、海外流出を止めることはできるのだろうか。財務省HP『法人所得課税の実効税率の国際比較』によると日本の法人税率は40.69%、フランスは33.33%、ドイツは29.83%、イギリスは28%と、税率だけをみると確かに高い。しかし、税に加えて社会保険料負担も考慮に入れて考えると、財務省HP『社会保険料事業主負担及び法人所得課税の税収の国際比較(対国民所得比)』によれば、日本は12.9%、フランスは19%、ドイツは11.5%、イギリスは9.9%、スウェーデンは18%である。このように企業負担を税だけではなく社会保険料も含めて見てみると日本の企業負担はさほど高くない。

次に法人税率緩和によって企業の海外流出を防ぐことができるか検討したい。経済産業省HP『海外事業活動基本調査 投資決定のポイントについて』によると、海外投資を決定する際に最も高いポイントは、「現地の製品需要が旺盛又は今後の需要が見込まれる」73.2%である。次に高いのは「納入先を含む、他の日系企業の進出実績がある」28.9%。次は「良質で安価な労働力が確保できる」24.2%である。次に「税制・融資等の優遇措置がある」をみると、わずか8.9%である。以上から企業の投資決定は現地の需要によって決まることが明らかなので、法人税率を緩和しても企業の海外流出を止めることはできないし、逆に考えれば海外企業を誘致することもできないと考えられる。保険料負担の国際比較からわかるように、日本の企業負担を大きくする余地はまだあると考えられるし、法人税率を緩和したところで海外流出は避けられないので、少なくとも法人税率の緩和は間違った政策だと考える。法人税率緩和が国際競争力に良い影響を与えているとも思えない。以上の二点から法人税率強化を提案する。

 

 

 最後に国債発行による成長分野への投資に伴う税収の自然増について述べる。

日本の債務状況に関しては悲観論と楽観論の双方が存在し、どちらが正しいかの判断は正直非常に難しい。直近の記事を参考にすると、『米州研究所ロベール・ボワイエ氏――国債の海外保有増は危険(日本経済新聞 2012年9月24日 朝刊)』によれば、『日本の政府債務の規模は大きいが、長期金利はなお年2%以下の低水準だ。国内の投資家も低い利回りを受け入れており、危機的な状況とはいえない。経済低迷を打開し、成長を促すには需要不足を補う政策が重要になる。つまり財政出動で経済を下支えする政策が有効で、国債発行をためらってはいけない。』と述べられている。こうした意見に依拠すれば、日本の国債は悲観すべき状況ではないと言える。ここに私見を加えると、将来性のある政策に対する国債発行であれば、国債の信認は下がらず暴落する恐れもないのではないかと考える。

 

 

 

 

 このように国債が暴落しないことを前提に考えた場合、次は具体的にどこが成長分野かということを検討する必要がある。私が考えるのは、福祉や医療、介護などの分野である。先日の敬老の日における総務省の発表では、65歳以上の高齢者は3000万人を超え、総人口に占める割合も24.1%と過去最高を更新した。総人口の約4分の1が高齢者という環境において、福祉や医療、介護が今後の成長分野であることは間違いないと考えられる。また、総務省統計局『労働力調査 主な産業別就業者数』によると、福祉・医療分野は2002年の段階で474万人だが、2010年の段階では約180万人増加の653万人である。一方この間の建設業は618万人から498万人に減少している。その他の産業を見ても福祉・医療分野ほどの就業者人口の増加は見られない。こうした「雇用」という面でも福祉・医療分野は成長の余地があると考える。雇用が増えるということは納税者数も増大するので、税収の自然増も見込めると考える。加えて、この分野で働く人々の労働環境は良いとは言い難いので、賃金等の改善を図っていけばなお一層の就業者数の増加につながるのではないか。以上が私の考える消費税増税反対と、それを補う財源についてである。

 

 

 

【参考文献】
・小此木潔『消費税をどうするか―再分配と負担の視点から』岩波書店、2009年
・斎藤貴男『消費税のカラクリ』講談社現代新書、2010年
・経済産業省HP『海外事業活動基本調査 ①‐07投資決定のポイントについて(企業規模別)』2010年
・財務省HP『平成22年度税制改正の大綱 参考資料 法人所得課税の実効税率の国際比較、社会保険料事業主負担及び法人所得課税の税収の国際比較』2009年1月現在
・厚生労働省HP『厚生労働白書 22年版 第二章 参加型社会保障の確立に向けて』
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/10/dl/02-02-03.pdf 閲覧日:2012年9月13日
・ロベール・ボワイエ『国債の海外保有増は危険』日本経済新聞、2012年9月24日、朝刊
・『65歳以上が初の3千万人突破…24.1%』読売新聞、2012年9月17日、電子版
・総務省統計局『労働力調査』 http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.htm
平成24年7月分 閲覧日:2012年9月25日

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