日本は福祉国家型財政なのか―小泉政権期の財政運営
2-2 小泉政権期の財政運営
小泉政権は2001年4月に誕生しました。小泉政権期の財政運営は、90年代のケインズ主義型財政によって悪化した財政の立て直しを図るべく、歳出抑制型財政の方向を目指したものでした。それを表すものが、政権発足後まもなく閣議決定された、いわゆる「骨太の方針」です。「骨太の方針」では、財政改革プログラムについて、「『平成十四年度において、財政健全化の第一歩として、国債発行を三〇兆円以下に抑制することを目標とする。その後、プライマリー・バランスを黒字化することを目標として政策運営を行う』(注;田中下記参考文献、10頁)」と書かれました。また、02年1月には経済財政運営の中期的な将来展望を示す「構造改革と経済財政の中期展望」も閣議決定しました。小泉政権はこれらをもとに、歳出抑制型の予算編成を行いました。具体的に見ていくと、06年の一般会計歳出総額は02年に比べて2.7%減少している。国債費(15.6%増)、社会保障関係費(4.7%増)、地方交付税(2.0%増)と増加している経費もありますが、文教科学振興費(20.8%減)、公共事業費(15.9%減)、防衛関係費(2.1%減)などは大幅に削減されています(注;田中下記参考文献、13頁)。
また、03年以降の「いざなぎ超え」の景気回復によって税収の自然増が続いたこともあり、公債依存度は低下してきました。06年には改革の仕上げとして「骨太の方針2006」が閣議決定され、「歳出・歳入一体改革」が発表されました。ポイントとしては、以下の3点です(注;田中下記参考文献、14頁)。
・小泉内閣の財政健全化(2001~06年度)を第Ⅰ期と位置付けたうえで、第Ⅱ期(07~10年代初頭)の目標として、11年度には、国・地方の基礎的財政収支を確実に黒字化する。
・第Ⅲ期(2010年代初頭~10年代半ば)では、基礎的財政収支の黒字幅を確保し、債務残高GDP比の発散を止め、安定的に引き下げる。
・名目経済成長率を3%とした場合の2011年度に基礎的財政収支を黒字化するために必要となる対応額を16.5兆円と見積もり、そのうち11.4兆~14.3兆円を歳出削減で対応する(さらに、社会保障など各分野における歳出削減目標額も明示)。
このように見ると、社会保障関係費や地方交付税などでの微増が見られるものの、全体としての小泉政権期の財政運営は歳出抑制型財政と呼んで差支えないでしょう。
参考文献
・田中秀明『日本の財政』中央公論新社、2013年、9-42頁