競争は好きですか? 競争は楽しいですか? 競争に疲れましたか? 競争は怖いですか?
みなさんは、競争は好きですか?
「競争」と聞いて、なにを想像しますか?
「競争」は、世の中にたくさんあります。
学校でも競争し、会社の中でも競争するかもしれません。
競争はもちろん人だけでなく、会社同士なども競争する可能性があります。
競争が好きな人もいれば、嫌いな人もいます。
競争に参加したくなくても強制的に参加させられてしまうかもしれません。
もしかしたら、この文章を読んでいる今この瞬間にもなにかの競争に巻き込まれているかもしれません。
そんな競争には、どのような意味があるのでしょうか?
井上義朗さんという方の『二つの「競争」 競争観をめぐる現代経済思想』という本では、競争を2つに分けています。
以下は、井上さんが2つに分けた時の考え方です。
・「淘汰性/コンペティション」・・負けないようにする競争
・「模倣性/エミュレーション」・・勝とうとする競争
この2つには違いが無いように見えますが、井上さんは明確な違いがあることを示しています。
もちろん、著書の中では、2つの競争について、もっと細かく、もっと厳密に、もっと色々な思想(アダム・スミスやプラトンなど)を取り上げて論じていますが、ここでは「競争を大きく2つに分類した」という部分を取り上げてみます。
(2つの違いとその性質をよりはっきり理解することで、見えてくることも多いので、
詳しく知りたい方は、ぜひ読んでみて下さい。)
そこで、上の競争の2つの分類について、具体的に自分でちょっと考えてみました。
ある家族がいました。
家族は4人で、父、母、息子、娘がいます。
父は、地方の中小企業で働いていました。同僚の中には幹部に昇格するなど、エリートコースを進んでいる人も何人かいて、父はその様子を悔しそうに見ながら、「自分も負けないぞ」と思っていました。そう思っていたところ、他の企業が新商品を作って売り上げを伸ばしたこともあり、会社の経営が段々と悪化し、倒産してしまいました。家庭の収入のほとんどは父の労働だったので、家族は困ってしまいました。父は近所の人達と比べて貧乏な様子と、会社が倒産したことの辛さに耐えることが出来ず、自ら命を絶ってしまいました。
母はパートで働き、少ない収入を得ていたのですが、父が亡くなって以降、一生懸命働くようになりました。その結果、会社に認められ、20人のパートの中からたった1人だけ正社員になれる、という切符を母が手にすることが出来ました。もちろん、正社員に興味が無く、パートをクビにならないことだけを意識している人もちらほらいましたが・・。結局、母のおかげで3人家族はなんとか生活することが出来ました。
息子は進学校に通い、周囲の生徒の何倍も努力し、テストでは毎回高得点を獲得し、学校でも常に上位に入る生徒でした。さらに、甲子園の出場経験もあり、甲子園での一回戦敗退はとても悔しい思いでした。そんな彼は、元々好きだったこともあり、卒業後に、タンスを作る職人を目指すそうです。本当は東京の大学に進学しようとしたのですが、お金も無く、母も心配だったので、実家で生活しながらできる職業を選びました。「僕は負けず嫌いだから、タンスの世界でトップを目指す。地域で一番になって見せる。相手も少ないからなんとかなるよ!」と意気込んでいました。
最後に娘ですが、娘は父の死、母のパートとしての懸命な努力などを見てきていたため、とても家庭が心配でした。そのため、勉強も手につかず、成績も下から数えたほうが早く、あまりよくありませんでした。さらに、娘は家庭が貧乏なこともあり、クラスで唯一携帯を持っていませんでした。娘は、携帯を持っていないことが原因で仲間はずれにされ、友達が少しずつ離れていき、いじめられるようになり、クラスの中でケンカをすることが急激に増えていきました。その結果、娘は段々とひきこもるようになりました。この娘は、ある日首をつっていたそうです。部屋にあった手紙には、「争うのと貧乏はもうイヤ。」と残されていました。
今は、母と息子の2人で、近所の目を気にしながらも、懸命に暮らしています。
みなさんは上の話を読んでどう考えましたか?
上のお話はフィクションですが、いろんなところに2つの「競争」が含まれていることがわかります。
「競争」については様々な考え方があるでしょうが、どう考えるかは各人の自由です。
井上さんも著書の中で、「大切なことは、考え方を知ること」(p223)と言っています。
「競争」は世の中にたくさんあり、学校でも会社でも会社同士でも競争し、好き嫌いに関係なく競争に強制参加させられている場合もあります。
2つの競争のうち、どちらが良いのかという判断の前に、それぞれをよく知るという姿勢も、実は大切なのかもしれません。
ただ、最後にもう一度質問させてください。
「競争」は好きですか?
参考資料
・井上義朗『二つの「競争」』 競争観をめぐる現代経済思想