なぜトルーマン、クリントンは皆保険に失敗し、オバマは成功したのか
トルーマン政権時の国民皆保険の導入に失敗した要因としては、アメリカ医師会とウィティカー&バクスター社による公的健康保険反対キャンペーンが挙げられる。また、公的保険反対にとどまらず、民間保険拡大キャンペーンも行った。更に労働組合すらも雇用主との交渉での民間保険の提供を要求した。このような背景から、公的保険導入のための合意形成が困難で、民間保険が拡大することとなった。
クリントン政権時の国民皆保険の導入に失敗した要因としては、内的要因と外的要因に分けられる。内的要因としては、民主党リベラル派が皆保険の実現に固執する一方で、民主党穏健派は医療保険の市場競争の促進を主張したため、党内でまとまりきれなかったのである。外的要因としては、共和党が「クリントンを利するいかなる法案をも拒否する」という方針のもと、党全体がまとまりをもった。また、アメリカ労働総同盟・産別会議や全米自営業者連合もクリントンとの対決姿勢を強めていたため、公的皆保険としての合意を形成することが困難だった。更に、AFDCという制度上の問題も指摘できる。AFDCとは、事情はどうであれ貧困母子家庭は扶助する義務があるというシステムのため、モラルハザードが横行した。また、自身は無保険者にもかかわらず貧困母子家庭は扶助しなければならないという「拠出者と受益者の不一致」を招き、中間層の理解が得られない制度であった。こうした背景から、クリントンは皆保険の導入に失敗したと言える。
トルーマン、クリントンは失敗したにもかかわらず、オバマはなぜ成功したかという点では、第一にそもそもの目的が皆保険の導入であり、公的ではなく民間保険を中核とした制度設計だったために実現ハードルが低かったこと、第二に、クリントンらの失敗に学び、クリントンらの時のロビイストをうまく取り入れたことが挙げられる。改革の目的としては、金融危機に伴う失業率の上昇と、雇用主提供型保険の動揺による医療問題の深刻化、相変わらずの無保険者の存在への対応である。成功要因としては、前述のような改革ハードルの低さとロビイストを取り入れたことに加え、フィリバスターを回避できる上院の60議席という議会の圧倒的優位も挙げられる。
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