福祉の倫理について考える -ロールズとセン・ODA・ステレオタイプ・オルポート-
福祉の倫理について考えてみます
・福祉について提唱した人達の中で、代表的な人達に、
ジョン=ロールズとアマルティア=センという人達がいる
・ジョン=ロールズについて
・基本財(基本善)を、全員が自分の思い通りの生き方を選ぶことができるように
分けた上での民主的な社会が大切だと考えた
※基本財(基本善)・・一人一人が理想の生活を送ることができるようにするために
必要なものこと
(例:お金や名誉など)
→そこで、ロールズは、基本財をどのように分けるか、という部分の正義について考えた
・正義について考え、「正義論」という本を書いた
・アマルティア=センについて
・どのような福祉が良いか、ということについて考えた
・センは、福祉は、「五体満足か」、「公共施設はどの程度あるか」などのように、
人々がどのような状態か、どのような行動が取れるか、というような、
状態や選択肢の一つ一つを機能と名づけた
そして、その機能をまとめて、潜在能力と名づけた
→福祉とは、潜在能力(=人々が自分自身で選ぶことができる人生の選択肢)が
どの程度あるかで評価するべきと考えた
※セン以前の福祉の評価の方法として、代表的なものの1つに、功利主義があった
・功利主義的な福祉の評価の方法
→効用(どれくらいの快楽や欲求を満たすか、という満足度)の多さで評価した
※ただし、効用は、同じ内容でも、幸福度が変わってきてしまうことが問題とされた
例:ものすごく貧乏な人への1万円は幸福度が高いが、
大金持ちに1万円を渡しても幸福にならないかもしれない
・ODA(政府開発援助)について
※ODAは、世界全体の福祉を考える上でも重要な役割を果たしている
・ODAの正しいあり方について
→・援助の金額よりも、援助したお金が、人々の潜在能力を増やして、
民主化を促しているかが大切だと言われている
・その場所に応じて、お金の使い方を変える(援助した国が、援助された国を
操ったら意味がない)
・援助を意識するあまり、環境を無視する、ということをしてはいけない
※このようなあり方は、NGO(非政府組織)にも同じようなことが言えると言われている
・差別と偏見について
※なぜ、福祉において、差別と偏見が取り上げられるのか
→差別や偏見は、福祉の邪魔をしたり、潜在能力を下げたりと、
様々な問題を引き起こす可能性があるから
・差別と偏見において大切なこと
→差別がある、ということは事実であり、そのことを認めなければいけない
※「差別はない」とか、「差別はあるとしても自分は差別をしない」などのような
思いこみはしてはいけない
・差別の現状
・自分たちの仲間意識が強くなると、仲間意識がない他人を
無視したり排除したりする傾向がある
・ステレオタイプ(すでに固定化されているイメージのこと)が根強い
※ステレオタイプで考える人は、その人が自分のダメな部分を知っているにも関わらず
自分でダメな部分を認めないようにして、そのダメな部分を
自分が差別したい人に投影する場合が多いと言われている
・差別や偏見について考えた人に、オルポートという人がいる
・オルポートについて
・オルポートは、偏見する人の心の特徴は、
過度の一般化(オーバー=カテゴライゼーション)だと考えた
※過度の一般化・・差別されている人を、一人の人間として扱わずに、
中身をちゃんと見ようとしないこと
(例:ある高校の生徒の制服が乱れている姿を見ると、
その学校の生徒全員が乱れているように思ってしまう)
ポイント
・ロールズは、基本財などを使いながら、正義について考えた
・センは、機能や潜在能力で福祉を評価するべきと考え、
功利主義などの評価方法とは違う考え方を提示した
・ODAは、民主化を促すことや、資金の使い方を意識するべきであり、
NGOにも同じことが言える
・差別を事実として受け止め、ステレオタイプや、
オルポートの過度の一般化がある現状を認識するべき