日本は福祉国家型財政なのか―現在の財政運営

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投稿者:       投稿日時:2013/11/24 15:41      
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2-4 現在の財政運営

 紆余曲折を経て成立した消費税増税関連法案は、「近いうちに国民に信を問う」ことを条件に自公両党の賛成をとりつけたものだったので、法案成立後の12年12月に第46回衆院選が行われました。この選挙で民主党は大敗し、自民党が第1党に復帰、第2次安倍内閣が発足しました。安倍首相は経済再生を最優先事項として、そのために大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という、いわゆる「アベノミクス」を打ち出しました。

 財政のあり方を見ると、公共事業費が大幅に拡充されるとともに、新規国債発行額は50兆円にも上りました(注;田中下記参考文献、40-41頁)。小泉政権時に30兆円が目標とされていたことから、現在は大幅に財政が悪化していることがわかります。また、「日本の財政関係資料 平成25年10月」によれば、公共事業のポイントとして、以下のように挙げています(注;財務省、下記参考資料)。

 

公共事業

○ 「地域自主戦略交付金」の廃止等を財源※として、前年度から7,119億円(+15.6%)増額し5兆2,853億円を確保。

※ 「地域自主戦略交付金」の廃止(6,400億円程度)の他、農水省予算の非公共事業から公共事業へのシフト(400億円程度)等。

○ 「15か月予算」では77,279億円。

○ 24年度補正とあわせ、整備効果の早期発現や民間投資の誘発等の観点を踏まえつつ、国民の命と暮らしを守るインフラ老朽化対策や防災対策など重点3分野の施策に注力

 

 特に重要なのは3つ目のポイントで、公共事業によって有効需要を喚起しようとするケインズ主義型財政の典型だと言えます。したがって、現安倍政権の財政運営はケインズ型であり、福祉国家型ではないと言えます。

 

3、 小結

「日本は福祉国家型財政なのか」シリーズでは第3章で類型化した日本の財政のあり方と、第4章で確認した北欧諸国の福祉国家型財政を比較し、結局のところ日本は福祉国家型財政なのかどうかを検討してきました。これまで検討してきたとおり、日本の財政運営のあり方は戦後一貫して福祉国家型財政ではありませんでした。民主党政権期においては例外的に、福祉国家型に向かおうとした気配は見せましたが、普天間問題や東日本大震災への杜撰な対応などによって民主党への信頼は崩壊し、福祉国家型への道は閉ざされました。そして民主党が政権を取ったわずか3年で自民党が政権の座に復帰することとなりました。現在の自民党は相変わらずの公共事業を中心とした財政運営を繰り返しているのが現状で、国債もかなりの額を増発しており、このままいけば日本財政、日本社会の先行きは暗いように思われます。とはいえ、先行きを憂いていてもしかたがありません。筆者は、日本の未来を明るくするための手立てはいくらかあると考えています。それを次回以降で検討することにします。

 

参考文献、資料

・田中秀明『日本の財政』中央公論新社、2013年、40-41頁。

・財務省『日本の財政関係資料 平成25年10月』、4頁

http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/sy014_22.pdf (閲覧日:2013年11月4日)

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