スウェーデン―労働市場の特徴
特徴:
① 就労を促す社会的規範・社会保障制度
② 高い労働組合の組織率を背景とした労使協約重視の労使関係
③ 労働移動を促進する社会合意・仕組みの存在
①:アルベツリーニエン(就労原則)
⇒社会保障制度の受益者に対して、必要な職業訓練や人材投資によって労働市場に戻そうとする考え方
=就労することに高い価値を置く傾向が強い
制度としても、例えば年金制度は、給付が就労時の所得に比例する社会保険方式が基本で、就労に対するインセンティブが働いている
②:組合組織率が高く、労働法が「準強行的」
⇒つまり労働協約のほうが強いので、労働市場のルールは基本的に法律ではなく労使協約で決める。賃金の決定も同様
※この仕組みができた歴史的背景としては、「サルトショーバーデン協定」がある(1938年)
⇒スウェーデン経営者連盟(SAF)とスウェーデン全国労働組合連盟(LO)の間で締結された中央集権的協定。つまり、スウェーデンの賃金はマクロレベルで決められているので、社会全体の賃金格差が小さい
③:労働移動が活発
⇒その背景として重要なのが、労働組合が整理解雇を含めた労働移動を受容したこと。
この労働組合の考え方を基本として、労働市場政策と経済政策を体系化したのが「レーン=メイドナー・モデル」(1950年代)である
☆このモデルは、労働者が一つの職場にしがみつくのではなく、将来性のある職場に移ることが利益になるという、組合運動の発想の転換だった。また、合わせて労働組合出身者が長官を務める「雇用庁」も創設し、職業訓練や職業紹介をつかさどった
・解雇規制についても労働移動に協力的
⇒雇用保護法によって解雇に一定のルールはあるものの、余剰人員は常に正当な解雇理由に相当する。解雇無効時であっても、一定の金銭を払えば解雇は認められる。
※解雇が自由な一方で、企業は離職者の再就職に対しての責任を果たしていることも重要
⇒民間の再就職支援非営利組織(TRR)
TRRは、企業の事業再編で必要になる余剰人員に新たな再就職機会を見つけるのを支援することを目的に創設。加盟企業の賃金総額の0.3%の拠出金で運営。政府の財政的支援なし。
コーチングや失業時の収入補てんを行う
参考文献
・翁百合、西沢和彦、山田久、湯元健治『北欧モデル』日本経済新聞出版社、2012年、22-28頁
コメント
わかりやすいです。
日本の場合も簡単にまとめていただけませんか
わかりました。時間を見つけてやってみます。