北欧諸国の財政システム―目標と制度設計
・財政健全化を実現している3つの理由
1)適切なマクロ経済運営や成長戦略による高い成長率
2)歳入基盤がしっかりしている
3)中期的タームで歳出をコントロールする法的枠組み
1) 企業の国際競争力を高め、高い経済成長を実現することが高福祉システムを維持するために不可欠という認識
⇒その成長基盤やビジネス基盤の強化に積極的
Ex.ITやR&D(研究開発)、教育など
2) 高税率で課税ベースが広い
⇒これに加えて、社会保障にかかわる収支が常にバランスするよう、自治体ごとにサービス水準や税率の見直しが頻繁に行われる
=地方が行う社会保障の財源を地方が徴収するため、「受益と負担の関係」が見えやすい
3) 歳出総額を成長率や税収の伸び率との兼ね合いでコントロールしている
⇒財政健全化を実現している理由として重要なのは、税や保険料などの負担が高いからではないということ。高い税や保険料は高水準の福祉や社会保障に使われるのであって、財政赤字の削減に回っているわけではない。
Ex.フィンランド:歳出上限を設定する制度を導入(91年導入、03年改正)
03年、歳出上限からは住宅手当、失業給付、社会保障基金への移転支出、利払い費などは対象から除外
ノルウェー:予算均衡化の原則(地方自治体)
⇒毎年の歳入額で歳出額を調整する。財政赤字に陥った場合、2年以内に解消しなければならないと地方自治法で定められている
スウェーデン:地方財政は収支均衡が憲法で義務付けられている
参考文献
・翁百合、西沢和彦、山田久、湯元健治『北欧モデル』日本経済新聞出版社、2012年、151-156頁