地方自治と住民の動きについて
地方政治と住民の動きについて考えてみます
・地方自治の本来の目的について
・地方自治の本来の目的は、団体自治と住民自治という2つの大きな目的があると言われている
・団体自治・・地域の人々が日本の政府とは別に独立した、自治権を持つ団体を作ること
・住民自治・・団体自治で作った団体に、住民が参加して自治を運営すること
※現在、地方自治体の活動はナショナル・ミニマムの考え方を取り入れることが
必要だと言われている
・地方自治体・・普通地方自治体(都道府県や市町村などの地方自治体)と
特別地方自治体(東京23区や組合などの地方自治体)の
2つに分けられる
※地方自治体は、地方公共団体とも言う
・ナショナル・ミニマム・・国家や地方自治体が国民に対して
最低限度の生活水準を維持すること
※地方自治が考えられた背景について
・明治時代は、知事(各都道府県のトップの人)は国の政府が
任命する官吏(昔の言い方で、役人のこと)が担当し、
市町村長は、官吏の指示のもとに行動していたので、
中央集権的(権力を国家に集める考え方)だった
→日本国憲法が出来てからは、地方自治制度が生まれ、地方自治法が作られ、
地方分権(権力を地方に分散すること)が進んだ
※地方自治制度・・自治権(地方公共団体が自分達で行政が出来る権利のこと)を
都道府県や市町村に大幅に与える制度のこと
地方自治法・・地方自治に関する基本を決めた法律のこと
※地方自治は、政治の能力を高める場所として考えられていた
→そこで、トックビルやブライスという政治学者の人達が、
「地方自治は民主主義の学校」と呼んだ
・地方自治の仕組みについて
・地方自治は、地方公共団体の首長(執行機関、トップの人のこと)と
議会(議決機関)が担当する
→首長と議会は、お互いに抑制と均衡の関係があると言われている
※抑制や均衡の例
→・首長-・議会の解散権(議会を解散させる権利)がある
・議会の決定に対する拒否権(議会の決定に対して拒否する権利)がある
・議会-・首長の不信任決議権がある
・地方公共団体の権限について
→地方公共団体は、下のような権利を持っている
・条例制定権・・地方公共団体が、法律に違反しないレベルで条例を作る権利のこと
・自治立法権・・違反に対して、一定の罰を与えるような条例を作る権利のこと
・地方公共団体が行う仕事について
→地方公共団体は大きく2つの仕事がある
・自治事務・・自治体が自分から行う事務のこと
例:飲食店営業の許可、都市計画など
・法定受託事務・・国が実施する方法まで指定する事務のこと
例:国道の管理、国政選挙の管理など
・地方自治では、住民の直接請求権が認められている (国の政治では認められていない)
※直接請求権・・住民の政治の参加が直接的に認められている
→直接請求権の例
・イニシアティブ・・住民が条例を作ったり、変えたり、無くしたり
することを直接求める権利のこと
・リコール・・住民が、事務の監査請求権を使って、議会の解散、議員や首長を
クビにすることなどを求める権利のこと
※監査請求権・・会計や業務などをチェックする権利のこと
・住民投票制度(レファレンダム制度)・・何かしらの問題について、
住民の意思を投票で直接聞く制度のこと
・地方自治の現状と問題点について
・地方自治の財政について
・地方自治の財政は、昔は「3割自治」と言われるほど、
自治体が自ら集めた財源が少なかった
→そこで、地方自治は、地方交付税や国庫支出金などに頼ったと言われる
※・3割自治・・自治体が自分たちで集めた財源が3割程度しか
集められなかったことから、地方自治の自主財源が少ない言葉を
象徴する表現のこと
・地方交付税・・所得税、法人税、消費税などといった国の税金の一部を、
地方公共団体にある格差を無くすために配る財源のこと
・国庫支出金・・教育や道路の整備などの費用の一部を国が負担する財源のこと
ただし、国が負担する額は全額ではなく、
足りない分は地方が自分で補うことになる
※地方は、財源が足りない時に地方債(地方公共団体の借金)を発行することになるが、
発行する時は国の政府の許可が必要だった
→このような状況だったので、1999年に地方分権一括法という法律が作られ、
機関委任事務の廃止などが行われた
※機関委任事務・・国が地方公共団体などにお願いする事務のこと
機関委任事務があった時は、地方が国に従う形だったが、
機関委任事務が無くなってからは、
地方が国と対等の関係になったと言われる
→また、日本は「三位一体の改革」を行ったが、国と地方との関係には、
まだ多くの問題が残っていると言われている
※三位一体の改革・・地方税を増やすこと、
国庫支出金を減らすこと、
地方交付税を見直すことを同時に行うこと
→最近では、財政の土台をしっかりさせる、ということを意識して、
市町村合併が進められている
※現在は地方分権が進んでいるが、以前は中央集権のスタイルが強かったため、
以下のようなことが起きた
・地域の自主的な動き、個性などが弱くなってしまった
・重要なことが全て中央(東京)で決められるので、東京の一極集中と地方の衰退、
という現象が起きた
=東京に人口、情報、経済などが集まってきてしまった
・住民運動について
→現在、様々な住民運動が存在している
※住民運動の例
→・一村一品運動・・各地域が積極的に特産品を作って、地域の発展を目指す運動のこと
・村おこし運動・・人口が少なくなった村を活性化させることを目指す運動のこと
・住民が政策を決めることに対して、積極的に参加することが求められるようになった
・オンブズマン制度、情報公開制度、プライバシーの保護などは、
国の政府よりも先に地方が行ってきた
・自治基本条例という条例を作る動きが強くなってきている
=地方公共団体への地方分権の動きが強くなってきたことが見える
・地方の国際化について
→現在では、国際化が国レベルだけではなく、地方レベルにまで来るようになった
※地方の国際化の例
・国籍条項の撤廃・・地方公務員を日本人に限ること(国籍条項)について、
賛成、反対の議論がある
・外国人の地方参政権問題・・外国人に地方で参政権を与えるかどうかが
問題になっている
・住民の直接請求の具体的な手続きについて
・条例の制定か条例の改善か廃止の請求
→有権者の50分の1の署名が必要で、首長に請求する
=首長は、20日以内に議会で話し合い、その結果を公表しなければいけない
・監査請求
→有権者の50分の1の署名が必要で、監査委員に請求する
=監査の結果を公表して、議会や首長に報告する必要がある
・解散請求
→有権者の3分の1以上の署名が必要で、選挙管理委員会に請求する
=住民の投票で、過半数の人が解散する方に投票したら解散となる
・議員と首長の解職請求
→有権者の3分の1以上の署名が必要で、選挙管理委員会に請求する
=住民の投票で、過半数の人が解職すべき、という方に投票したらクビとなる
・主要公務員(副知事や副市長村長)の解職請求
→有権者の3分の1以上の署名が必要で、首長に請求する
=議会で話し合い、議員が3分の2以上出席する議会で、
4分の3以上が解職すべきに投票したらクビになる
ポイント
・地方自治の目的と背景、仕組みを押さえる
・地方公共団体の権利、住民の直接請求権を押さえる
・地方の財政問題、三位一体改革、住民運動、国際化を押さえる
・住民の直接請求の具体的な手続き押さえる