日本の起業意識が低いのはなぜか
世界の大学・研究機関でつくるグローバル・アントレプレナーシップ・モニターの「起業家精神に関する調査」によれば、日本の起業意識は最も低いらしい。調査の中身は、無作為に抽出した調査対象者のうち、新たにビジネスを始めたか、準備中と答えた人の比率をもとに作成していて、日本は4%と世界最下位だったそうです(69か国中)。
記事によれば、先進国は企業数が多く、雇用の受け皿が整うため、指数は低くなる傾向があるようですが、日本は起業する自信という観点からも低いという指摘をしています。
この解決策としては、日本の調査を担当した経済産業省は「日本は大企業が人材を抱えていることもあり、起業を身近なものとしてとらえにくい」と指摘しています。また、人材流動化を促すなど、起業しやすい環境づくりや挑戦する風土を築くことが欠かせないという。
日本の起業意識が低いのはやはり問題だろうと思います。特に経済活性化のためにイノベーションは必須だと思いますので、起業を考える人が増えることは重要だと思います。
起業を促すための政策として人材流動化を挙げています。人材流動化自体は進めるべき課題だと考えていますが、これが起業を促すかと考えるとちょっと難しいかなと思います。
そもそもなぜ、起業意識が低いのかを考えてみると、記事でも指摘されているように、先進国では企業数が多く雇用の受け皿が整っているというのが一つです。わざわざ起業なんかしなくてもどこかに就職すればそれなりに食べていけます。
もう一つは起業はなによりリスクが高いという点です。特に日本は雇用保険や年金、その他諸々の社会保障制度が脆弱ですので、「失敗したら終わり」と考える人が圧倒的に多いのではないでしょうか。つまり、失敗しても何度も挑戦できる環境が日本には整っていないということを多くの人が自覚しているのではないか、ということです。大きなチャレンジをして失敗し、家族を養うこともできなくなるくらいなら、無難に就職してそれなりに食べていければいいと考えるのは至って普通の気がします。
きちんとデータを追っているわけではないので何とも言えませんが、これが正しいとすれば、人材の流動化を進める大前提として、社会保障制度をもっときちんと整えることが必要だと思います。失敗してもとりあえず何とかなると思えるような制度が整えば、起業への挑戦者は増えるような気がします。
最近の解雇規制緩和の議論も、人材の流動化を促すために必要だと考えますが、これだけが先行すると雇用の不安定化が進み、賃金も下落するので消費抑制にもつながると考えられるので、経済にとっては悪影響だと思います。繰り返しますが、人材の流動化を進める前に社会保障制度を整えることのほうが先決だと思います。強い経済を作るために、社会保障制度の強化が必要なのではないでしょうか。
参考資料
・「日本の起業意識、世界最下位」『日本経済新聞』2013年5月16日付け、朝刊