幸福度の高い社会へ―2、社会保障を通じた経済成長による財政再建 2-2成長産業への投資

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投稿者:       投稿日時:2013/11/24 16:09      
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2-2 成長産業への投資

 より多くの人が働きやすい環境づくりと合わせて重要なのが成長産業への投資です。では、成長産業とはどの分野なのでしょうか。第1に、急速な勢いで進展する高齢社会の中で需要が増大している医療・介護などの福祉産業が挙げられます。総務省統計局「労働力調査」によれば、2002年の「医療・福祉」産業の雇用者数は440万人でしたが、2012年には676万人まで増加しています。この期間に雇用者がここまで増加している産業は他にありません。このように、雇用面から見れば「医療・福祉」産業は成長産業だと言えます。

 他方で、この分野における労働者の待遇は芳しくないのが現状です。厚生労働省『賃金構造基本統計調査 付属資料』によると、全産業と比較して、福祉施設介護員やホームヘルパーは給与が低く、勤続年数が短く、離職率が高い傾向にあります。また、同資料の「労働条件等の悩み、不安、不満等」に関する調査では、仕事内容の割に賃金が低いという回答が多くを占めています。これではいくら需要が大きくても就職したいとは思えないでしょう。高齢社会の進展で今後確実に需要が見込まれるからこそ、この産業に関わる職業訓練を拡充しながら労働条件も改善し、より多くの人にこの分野で就職できるよう支援することで、最終的には成長に寄与し、結果として税収の自然増および財政再建につながるのではないでしょうか。

 第2の成長産業として、情報通信産業が挙げられます。総務省『平成24年版 情報通信白書』によれば、情報通信産業の市場規模は、全産業中で最大規模だと指摘されています。また、主な産業の実質GDPの規模のうち、情報通信産業の実質GDPは全産業の10.6%を占め、主な産業の中で最大規模の産業となっています(注;総務省『平成24年版 情報通信白書』、299頁)。更に情報通信産業の経済成長への寄与度も大きく(注;同白書、301頁、図表4-1-1-7「実質GDP成長率に対する情報通信産業の寄与」参照)、経済波及効果も大きい(注;同白書、302頁、図表4-1-2-1「主な産業部門の最終需要による経済波及効果(付加価値誘発額、雇用誘発数)の推移」参照)。

こうしてみると、情報通信産業が成長産業であることは間違いないでしょう。しかしながら、この産業は知識社会の代表とも言える産業で、高い技能が求められる産業でもあります。だからこそ、こうした産業でも働けるような技能を身に付けられる環境を整えることも重要でしょう。職業訓練だけでなく、教育の中に情報通信に関わる授業(例えばプログラミングなど)を組み込むことも必要かもしれません。

 第3の成長産業として、自然エネルギー産業も挙げられます。東日本大震災以降、エネルギー問題は大きな政策課題となっています。足がかりに日本の電源構成を見ると、大半が火力発電で、自然エネルギーの比率は10%程度です(注;環境エネルギー政策研究所編『自然エネルギー白書2013 グラフ集』「日本の電源構成(発電量)の推移」10頁)。しかしながら、あのような事故を起こした原子力発電所を今後増設するという方向性は考えにくく、火力発電に関しても環境汚染問題や資源の枯渇という観点から言えば、火力発電に依存しすぎるのもよくないでしょう。だとすれば、自然エネルギーの比率を高めていくことが今後の大まかな方向性だと考えられます。これに関しては日本だけでなく、世界的にもその流れがうかがえます(注;『自然エネルギー白書2013 グラフ集』によれば、2020年の自然エネルギー電力の導入目標値は、フランス27%、ドイツ39%、イタリア26%、スペイン40%、イギリス31%と高い目標を設定している)。自然エネルギー比率が10%程度の日本では、現段階では難しくても、今後この比率を引き上げる余地はあるでしょうし、引き上げるべきでしょう。この産業に投資することは、環境面でも雇用創出の面でもメリットが大きいように思われます。

 

参考資料

・環境エネルギー政策研究所編『自然エネルギー白書2013 グラフ集』10-11頁http://www.isep.or.jp/wp-content/uploads/2013/04/JSR2013_Graph.pdf (閲覧日:2013年11月22日)

・厚生労働省『賃金構造基本統計調査(平成19年度)、付属資料』http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/dl/s0718-8c.pdf (閲覧日:2013年11月21日)

・総務省『平成24年版 情報通信白書』「第4章 情報通信の現況」298-302頁http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h24/pdf/n4010000.pdf (閲覧日:2013年11月22日)

・総務省統計局『労働力調査』「第12回改定日本標準産業分類別雇用者数」http://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.htm (閲覧日:2013年11月22日)

・内閣府『平成18年版 国民生活白書』65-82頁http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h18/10_pdf/01_honpen/pdf/06ksha0202.pdf (閲覧日:2013年11月20日)

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