金融とは何か―金融市場・金利について
・金融商品と金融市場
以前に金融とは通貨の貸し借りもしくは提供だと述べましたが、貸し借りが行われるということは、そこに債権債務という塊が生まれます。この塊が金融仲介機関によって「売られている」と考えれば、これを金融商品と呼ぶことができると思います。
もっとも単純な金融商品としては預金、貸出、株式や債券などがありますが、もともとの取引(原取引)に様々な工夫がなされて続々と新しい商品(派生商品)が生まれています。
こうした金融商品の貸借・売買の場が広義の金融市場です。「場」といってもここ!という具体的な「場」があるわけではなく、当事者同士の取引であれば取引をしたところが即「場」となります。ただ、きちんとした取引をするためにはある程度のコミュニケーションや情報収集が必要なので、こうした取引をする人たちが集まる「場所」ができます。それがニューヨークのウォールストリートやロンドンのシティ、日本では兜町です。
・金融市場の種類
広義の金融市場にもいくつか種類があります。
主としてプロ向けの場
:短期金融市場、債権市場
主としてアマチュア向けの場
:預金・保険・信託市場
プロアマが入り乱れる場
:株式市場(証券市場)、外国為替市場
などがあります。金融政策が働きかける場としては短期金融市場なのですが、その影響が次第にほかの市場を経由して、消費・投資・生産・雇用といった実体経済波及していきます。これに連動して物価も変動します。こうした金融政策の波及過程をトランスミッション・メカニズムというのですが、これについては別途まとめます。
・金利とは何か
金融政策の話に入る前に、金利についても確認しておきます。
金利
:資金の貸借への対価のこと。池上彰さんは、金利のことを「我慢料」という言い方をしていたと思います。
具体的に考えてみましょう。例えば個人が銀行に預金したとします。この場合、いくらかの金利がつきます(現在はかなりの低金利で、金利ゼロのようなものですが)。なぜかというと、預金するという行為によって、資金が当事者の手元を離れるので、銀行の倒産によって預金が返ってこないというリスクを負うことになるからです(ペイオフという制度もありますが)。つまり、このリスク(信用リスクといいます)に対する見返り、池上さん的に言えばこのリスクに対する「我慢料」が金利なのです。
もう1つ、預金というのは流動性を犠牲にします。流動性とは、簡単に言えば貨幣の交換の容易さのことを言います。現金で保有している場合はその場ですぐに商品と交換可能ですが、預金していた場合は引き出すという手間がかかるので、その分流動性が低いと言えます。こうした流動性の犠牲に対する見返りを要求する権利(リスク・プレミアム)としても、金利があるのです。
・利回りとは何か
金利については、利回りとの違いについて区別することが大切です。リスクに対する見返りという点では両者に違いはないのですが、見返りの金額が事前的に決まるか事後的に決まるかという点で違いがあります。
元本額に対する見返りが初めから決まっている場合(事前的に決まっている場合)を金利といい、元本に対する見返りが事後的に決まる商品については利回りと表現することが一般的です。
ちなみにこれは厳密に定義されているわけではないので、これらの言葉を耳にした時にどちらの意味で使われているのかを把握する、くらいの認識で構いません。仮に事前的に決まっている場合に利回りと呼んでも間違いではありません。
次回は金融政策の決定と実行がどのように行われているかについてまとめようと思っています。
湯本雅士『金融政策入門』岩波書店、2013年