金融とは何か―出資・融資・通貨
以前に、現代は金融が実体経済を規定している構造があるという旨の記事を書きました。
金融と聞くだけで拒否反応を起こす人も一定数いるように思いますが、上記のような構造があるだけに、現代において金融に関して無知であることは結構危ないことだと思います(自戒を込めて)。というより、ほとんどの人が金融に関わって生きているわけですので(銀行に預金している時点で金融と関わっていることになるので)、基礎知識くらいは身につけておくべきかと思います。そこで今回からは、そもそも金融って何ぞや?というところからまとめていきたいと思います。
・金融とは何か
簡単に言ってしまえば、「手元に資金が余っている個人や組織(経済主体)が、資金を必要としている経済主体にそれを提供し利用させること」と言えます。
提供の仕方としては2種類あります。出資と融資です。
出資:お金を出すこと(=返済されない)。
具体的には株式が該当します。株式とは、企業が資金調達をするために発行するものです。企業が発行する株式が買われることでその企業にお金が入り、その資金をもとに企業は経済活動(工場を建てるなど)をするわけです。その経済活動によって出た利益の一部を配当(出資の見返り)として株式を買った人(株主=出資者)に配分されます。
融資:お金を借りること(=返済する)。
具体的には債券が該当します。お金を返してくださいと言える権利のことを債権といい、それを目に見えるかたちにしたのが債券です(漢字の違いに留意してください)。お金を借りると(融資を受けると)債権が発行され、一定期間内に返済する必要があります。
・通貨とは何か
金融を考える際に必須なのが通貨です。通貨といえば一般的に、紙幣(銀行券)や貨幣(硬貨)をイメージすると思います。しかしながら、初めからこれらの通貨が使われていたわけではありません。
というのも、人間社会はもともと物々交換をしていたのですが、次第にある特定のモノを媒介として交換を行う間接交換の時代になりました。ここでのモノとは穀物、動物、宝石、貴金属などの日常生活に必要なもの、身辺に飾るものなど、一般に大切にしなければならないと考えられていたものです。人々が自分の所持品と交換にそれらを受け取ったのは、それらさえあれば自分の必要としている他のモノをいつでも手にできると信じ、また実際手に入れることができたからです。
この媒介物であるモノは、次第に金銀へと統一されていきました。しかしながら、これらはあまりにも高価で生活上使いづらい、使用中に摩耗しては困るなどの理由から、その代替物(紙、鉄など)が通貨として機能しました。つまり、手持ちの金銀を預けて、代わりに預かり証を受け取るのです。これが信用のある通貨となったのです。かつてこうしたことを仕事にしていたのが両替商で、現在ではそれが発展して銀行となり、それが発行する預かり証が銀行券です。
次回は中央銀行の始まりあたりをまとめたいと思います。
湯本雅士『金融政策入門』岩波書店、2013年