安倍晋三政権の金融政策について考えてみました -日本経済を社会のかたすみから予想するお話-
安倍政権になってから金融政策に関する話題が非常に多いので、金融政策について考えてみました。
※金融政策とは…
⇒金融市場での金利の調整を通じて景気や物価の安定をはかる政策のこと。
金融政策には以下3つの種類があります。
1、 公定歩合操作2、預金準備率操作3、公開市場操作
公定歩合操作:中央銀行(日本銀行)が市中金融機関(一般の銀行)に資金を貸し出す際の利子率(公定歩合)を上下させることで民間の資金需要に影響を与え、資金量を調整する政策
預金準備率操作:市中金融機関は預金の一定割合を日銀に準備金として預けておかなければならない。その準備金を上下させて市中銀行の貸出しを調整する政策
公開市場操作:日銀が市中金融機関に対して、国債や株式などの有価証券を売買することで金融市場の資金量を調整する政策
⇒公開市場操作の中に2つの政策がある
売りオペレーション:日銀が市中銀行に国債などの有価証券を売ること
⇒金融市場の資金量を抑える役割(好況時に行う)
買いオペレーション:日銀が市中銀行に国債などの有価証券を買うこと
⇒金融市場の資金量を増やす役割(不況時に行う)
※公定歩合操作と預金準備率操作に関しては、ほとんど役割を果たしていないのが現状。そのため、近年で言われる金融政策とは公開市場操作と考えて差し支えありません。公開市場操作以外にほぼ役割をはたしていない要因としては、公定歩合操作は金利の自由化によって公定歩合と金融機関の金利が直接的に連動しなくなったこと、預金準備率操作は預金以外の金融商品の多様化や金融機関経営に与える影響が大きいことなどが挙げられる。
☆今回安倍政権がやろうとしていることは、お金が回っていないから不況である!ということで、公開市場操作の中の買いオペレーションです。
上記で確認したように、買いオペによって金融市場の資金量が増える→企業や個人がお金を借りやすくなる→借りたお金で投資や消費が活性化→それに伴い物価上昇→企業の売り上げ、給料の上昇→デフレ解消
というシナリオを目指しています。
ここまでが安倍政権のやろうとしている大まかなことです。
では、この政策がはたして効果があるのか?というところを考えるとどうなのでしょうか・・
結論から言えば、今回の金融緩和政策に効果はなく、むしろ悪化するのではないかということです。
まず、金融緩和をすると、資金が市中銀行に回ります。しかし、市中に回った資金を企業や個人が本当に借りるかどうかは別問題で、むしろ借りないのではないか、ということが考えられます。なぜなら、給与所得はここ十数年下がり続けていて、「資金需要」がそもそもないからです。また、儲かっていて力のある企業が借りたとしても、給与が下がって内需が縮小している日本国内には投資されず、海外投資が予想されます。このため、結局のところ日本経済の活性化には寄与しません(正確には大企業の活動は成功するかもしれないが、国民生活(給与)には返ってこない)。
更に悪いことに、「川上インフレ」「川下デフレ」という、物価は上がるけど所得は上がらない最悪の事態が起こり得るかもしれないです。ここでいう「川上インフレ」とは、ガソリンや食料などの資源価格の上昇を、「川下デフレ」とは、所得の減少を意味します。要するに、国内であふれた資金が需要のない国内ではなく、需要があり成長の見込める海外(中国、インド、ブラジルなど)へと流れます。するとこれらの国の人々が豊かになってくるので消費が増大し、国際的に価格が上昇します(川上インフレ)。その一方で内需が拡大しているわけではないので日本国内の給与所得の低迷は続きます(川下デフレ)。また、国際価格の上昇に伴っていっそう生活が困窮してくる地域(北朝鮮、アフリカなど)も出てきます。こうした国々はもともと苦しい環境から更に苦しくなるので、民主化なんてぬるいこと言ってたらダメだ、戦って勝つことで苦しさから逃れよう、的なことになってイスラム原理主義のような過激派が前面に出てくる可能性も含んでいるのです。その意味ではこの前のアルジェリアの事件は先駆け的に起きたと見ることもできなくはありません。
このようにみると、金融緩和一つで国内問題にとどまらず、国際社会に大きな影響を及ぼすグローバルな時代ということを実感します。本当にこうなるかはわかりませんが、面白いと思ったのでまとめてみました。