金融とは何か―決定者と金融政策の種類
以前、金融政策とは、通貨・金融に働きかけ、それを変化させることによって実体経済に影響を与える政策だと述べました。今回はそれを誰が決めるのか、金融政策にはどのような種類があるのかについてまとめます。
・誰が決定するか
例外もありますが、基本的に各国の中央銀行とも委員会制度がとられており、委員会の多数決で決定されています。つまり、金融政策に関しては政府に介入の余地はなく、中央銀行は独立した存在です。アベノミクスの中で、日銀法の改正という議論が出てきた背景はここにあります。金融に介入したいけれど、現状ではできないから改正しよう!と言い出したのです。実際に改正はされていないのですが、今回は首相の言うことを聞いて金融緩和をしたことになります。
※ちなみになぜ日本銀行が独立しているのかというと、第2次大戦中にさかのぼります。1942年、日銀法の制定によって政府への無制限の無担保融資や国債引き受けを規定し、軍事融資のための資金統制の機関として機能しました。要は軍費調達のために大量のお金を刷るように指示され、政府の言うままに刷ることで、日銀が戦争に加担することになってしまったということです。この反省から中央銀行は独立させましょう!となったのです。
・金融政策の種類
金融政策には3つの種類があります。これについてはこちらもわかりやすいと思います。
1、預金準備率操作
金融政策のスタートは、中央銀行が短期金融市場で取引される資金の需給関係に影響を与え、それによって政策金利(中銀が市中銀に融資する際の金利)をみずから望む水準に近づけることから始まります。短期金融市場で取引される金融商品には、国庫短期証券、手形など色々あるのですが、突き詰めると、金融機関が中央銀行に保有する預金に行き着きます。短期金融市場の資金といえば通常この預金をさし、その大部分がリザーブ(準備)と呼ばれています。このリザーブを上下させて市中銀行の貸出しを調整する政策を預金準備率操作といいます。リザーブ適当な量というは法律(準備預金法)で定められており、その最低限残高を法定準備、預金残高に対するその比率を法定準備率といいます。ただし、現在では預金準備率操作は使われていません。準備率のごくわずかな変化でも、金融市場に大きな影響を与えてしまうからです。
こちらと合わせて読むことをオススメします。
2、公定歩合操作
中央銀行が市中銀行に資金を貸し出す際の利子率(公定歩合)を上下させることで民間の資金需要に影響を与え、資金量を調節する政策です。これも近年ではほとんど使われていません。詳しくは上記リンクへ。
3、公開市場操作
中央銀行が市中銀行に対して、国債や株式などの有価証券を売買することで金融市場の資金量を調節する政策です。これには売りオペレーションと買いオペレーションという2種類があります。現代日本において金融政策と耳にした場合、このどちらかだと考えてもらって差し支えないと思います。
買いオペレーション
:市中銀行が保有する短期証券を中央銀行が買い入れることで、その市中銀行の中央銀行預金を増やす(リザーブを供給)こと。
⇒金融市場の資金量を増やすことにつながる(不況時に行う)
売りオペレーション
:中央銀行が保有する短期証券を市中銀行に売ることで、その市中銀行の中央銀行の預金を減らす(リザーブを吸収する)こと。
⇒金融市場の資金量を減らすことにつながる(好況時に行う)
ちなみにアベノミクスとして行われたのは買いオペレーションです。買いオペで金融市場の資金量を増やす→企業や個人がお金を借りやすくなる→借りたお金で投資や消費が活性化→物価上昇→売上、給料上昇→デフレ解消、という流れを狙っています。
次回は金融政策の波及過程(トランスミッション・メカニズム)についてまとめたいと思っています。
湯本雅士『金融政策入門』岩波書店、2013年