企業主義統治とは
企業主義統合とは、企業の中で自助努力を重ね、自分の属する企業の業績向上に貢献するとともに、その貢献度をめぐって労働者同士が競争して勝ち抜くことによって自らの雇用と生活を守る、というものです。後藤道夫によれば、企業主義統合は二つの要素から成り立っているといいます。その第一が日本型雇用です。日本型雇用は、周知のとおり終身雇用慣行と年功型賃金を大きな特徴としています。日本型雇用では自分の属する企業での勤続年数に応じて処遇が上がるので、同じ企業に勤め続けることを前提として生活を設計します。
労働技能という観点から言えば、職業訓練をほとんど受けていない若者が、学校卒業と同時に正社員として雇用され、職業訓練は企業内で行われます。職業訓練を受けていない新卒労働者の採用のため、採用方法も基本的に職種別になりません。いわゆる総合職採用です。したがって、日本の労働市場は職種別になっていないのも大きな特徴です。
企業主義統合の第二の要素は、競争主義の受容です。ここでの競争主義には二つの意味があります。一つは企業間競争で、もう一つが企業内における労働者間競争です。前者は企業競争に負けないことではじめて会社が存続し、給与がもらえるという考え方、後者は労働者間競争に勝つことで自らの雇用と生活を守るという考え方です。日本型雇用によって転職するという選択肢を制限されていたので、こうした競争主義的な考え方は強化されやすかったのです。
以上のような企業主義統合というシステムは、企業が生き残ることと自身が生き残ることが一体で、企業と労働者はいわば「運命共同体」という考え方が浸透していました。企業は日本型雇用というかたちで雇用と賃金を保障するかわりに、労働者は競争主義を受容し(させられる?)企業競争に貢献するという、ある種の合意が形成されていたのです。
参考文献
・後藤道夫『収縮する日本型「大衆社会」―経済グローバリズムと国民の分裂』旬報社、2001年
・同上『反「構造改革」』青木書店、2002年