戦後から現在までの概観と時期区分―財政赤字の第2次累増期(1990-現在まで)

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投稿者:       投稿日時:2013/10/07 10:58      
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5-1 バブル崩壊から小泉政権まで

 90年度当初予算で赤字国債依存度がゼロになって以来、これは93年まで継続しましたが、バブル崩壊後の長引く景気低迷を打開するために行われた大規模な財政出動などを背景に、94年以降は再び赤字国債を抱えることになります。過去記事の図2-2を見れば明らかなように、90年代に入ってから公共事業関係費や財政投融資は大きく増大しています。要するに、総需要の喚起を目的としたケインズ政策の発動です。こうした政策効果もあり、日本経済は緩やかな回復をみたものの、95年の阪神淡路大震災急激な為替レートの変動などにより、景気は足踏み状態となった。97年にはバブル崩壊以降の度重なる財政出動などによって日本の財政状況は危機的だという声が高まりました。これを受けて97年度を「財政構造改革元年」と位置付け、聖域のない徹底した歳出の見直しに取り組みました。

 他方で歳入面では、法人税、所得税は大幅減税、消費税率は3%から5%へと引き上げられました。また、同年秋には大規模な金融危機や企業倒産の増加、アジア通貨危機などが重なり、98年の日本経済はマイナス成長に陥りました。これを受けて政府は経済情勢に弾力的に対応するために財政構造改革法を凍結し、経済対策に注力するという方向に切り替えたことで財政は急速に悪化していきました。この方向性は2000年まで続きます。

 

5-2小泉政権から東日本大震災まで

 2000年代に入ると小泉内閣が発足し、財政構造改革をはじめとした様々な構造改革に着手しました。内閣府に設置された経済財政諮問会議を中心に、いわゆる「基本方針」、「骨太の方針」を取りまとめ、日本の目指す方向性を示しました。また、06年に閣議決定された「基本方針2006」では、日本財政が極めて厳しい状況であることを踏まえ、歳出削減と歳入改革を両輪とする「歳出・歳入一体改革」の基本的な考え方が示されました。小泉政権の景気は、それまで戦後最長とされたいざなぎ景気を超えたという点で「いざなぎ」超えの景気回復と言われています。しかし、戦後最長の景気回復とは裏腹に、思いのほか低い水準での景気回復であったため、景気回復の実感があまりなかったと指摘されます。とはいえ、財政面では三位一体改革を中心とした予算編成の効果もあり、国債依存度は低下していきました。

 小泉政権以後は、世界経済の好況もあり、引き続き歳出削減にも取り組みながら、国債依存度は比較的安定して推移しました。しかし、08年のリーマン・ショックを契機に、景気低迷による税収不足と生活防衛のための緊急対策によって歳出は増大しました。これによって再び国債依存度は高まっていきました。

 09年夏には歴史的な政権交代が実現し、鳩山内閣が誕生しました。10年度予算においては、子ども手当や高校授業料の無償化、高速道路の無料化などによって歳出を増大しました。歳入面では税収不足が見込まれたため、国債発行が追加され、国債依存度は大きくなっていきました。更に11年には東日本大震災が発生し、震災対応のための3次にわたる補正予算が組まれ、歳出増大圧力となりました。

 小泉政権期においては国債依存度が低下する時期があったものの、リーマン・ショックや東日本大震災、少子高齢化などを背景とする財政需要の増大などもあって歳出圧力は大きく、全体としては依然として国債に依存せざるを得ない状態が続いているというのが今日の財政状況です。

 

参考文献

・山口公生『図説 日本の財政』東洋経済新報社、2011年、358-364頁

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