基本的人権について④ -社会権について考える-
基本的人権について、社会権を中心に考えてみます
・社会権について
・社会権とは・・自由権を補うための権利として、20世紀に登場した権利のこと
→社会権は、生存権、教育を受ける権利、勤労の権利、の
主に3種類に分けられている
・社会権が初めて取り入れられたのが、
1919年のドイツで作られたワイマール憲法という憲法だった
・生存権について
・生存権とは・・「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利のこと
→この権利を保障するために、国は社会福祉や社会保障が
向上することを約束した
※しかし、生存権は自由権と違い、権利の内容が具体的ではなく、
政府の政策を待たなければいけないという問題がある
※生存権には、プログラム規定説と法的権利説の2つの考え方が存在している
・プログラム規定説・・生存権は形式上のもので、国の政策が生存権に違反しても、
法律的な判断を裁判では争えないという考え方のこと
・法的権利説・・生存権は、法律的な権利を保障しているという考え方のこと
→生存権に対して国は、生活保護法や児童福祉法、老人福祉法などの法律を作ることで
具体的にしてきたが、生存権については朝日訴訟や堀木訴訟などの訴訟が
大きく取り上げられた
※朝日訴訟・・結核で入院していた朝日さんという人が、生活保護の費用が少なすぎて、
「健康で文化的な最低限度の生活」ができないとして、
国に改善を求めて起こした訴訟のこと
→一審は朝日さん側が勝訴したが、二審は敗訴になり、
最高裁は朝日さん側の上告を退けた
※堀木訴訟・・堀木さんという人が障害福祉年金と児童扶養手当の併給
(同時に支給されること)を禁止されている国のルールに対して、
そのルールの改善を求めた訴訟のこと
→一審は堀木さん側が勝訴したが、二審、最高裁は堀木さんが敗訴した
・教育を受ける権利について
・憲法第26条で、全ての国民が「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」
と定められている
※ただし、「義務教育はこれを無償とする」とも定められている
=国民には、教育に関する施設や制度を整備して、
教育の場所を提供してもらうことを政府に求める権利がある
→憲法の考え方を教育の現場で活躍させるために、日本では教育基本法という法律を作った
・勤労の権利について
・勤労の権利とは・・働きたくても働くことができない人が、
国に対して働く機会を要求する権利のこと
※この考え方は、職業選択の自由(自分で好きな仕事を選べる
権利のこと)とは考え方が違う
→日本では、勤労の権利の考え方を土台にして、
職業安定法や雇用対策法などの法律が作られている
・勤労の権利に対して、労働者が自分から行動して生活を改善できる権利として
労働三権(労働基本権)がある
※労働三権・・団結権、団体交渉権、団体行動権(争議権)をまとめた呼び方のこと
・団結権・・労働者が自分の地位の向上のために団結する権利のこと
・団体交渉権・・給料や解雇などについて、
労働者が雇用者と交渉することができる権利のこと
・団体行動権・・自分達の主張などを通すために、
ストライキなどによって雇用者と戦う権利のこと
→労働三権をより具体的にしたものとして、労働三法がある
※労働三法・・労働基準法、労働組合法、労働関係調整法をまとめた呼び方のこと
・労働基準法・・労働に関する様々な規制を定めた法律のこと
・労働組合法・・労働者の団結権や団体交渉権などを保障して、
労働者の地位を向上させることを目的とする法律のこと
・労働関係調整法・・労働に関する争いの適切な調整を目指して、
労働に関する争いの予防や解決を目的とする法律のこと
※ただし、公務員は争議権が法律で否定され、労働基本権の制限が問題となった
→その代わりとして、人事院が設置されるなどして公務員は結局争いが禁止になった
※人事院・・公務員のルールを適切に使うために設置された施設のこと
ポイント
・社会権の概要を押さえる
・生存権の内容や考え方などを押さえる
・教育を受ける権利の内容や考え方などを押さえる
・勤労の権利の内容や考え方などを押さえる