日本と北欧諸国の社会モデルの比較―3、社会システムと幸福度

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投稿者:       投稿日時:2013/11/24 13:41      
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 前回までは、第1節では主に「受益」の部分、第2節では「負担」の部分について、日本と北欧の違いを検討してきました。本節では、第1節、第2節を踏まえた上で、社会システムのあり方と幸福度の関係についてみていくことにします。

 

3-1 幸福度ランキング

 幸福度に関するデータをいくつか見てみましょう。まず、イギリスのレスター大学(2006年)「国民の幸福度ランキング(注;スズキ下記参考文献、12頁、表0-1)」によれば、デンマークが1位、フィンランドが6位、スウェーデンが7位、ノルウェーが19位、日本が90位となっています。次に米政府が出資する非営利調査機関のワールド・バリューズ・サーベイ(2008年)の「幸福度調査(注;同、表0-2)」を見ると、デンマークが1位、スウェーデンが14位、ノルウェーが19位、日本が43位となっています(フィンランドは未記載)。更に最近のデータを見てみましょう。国連のSustainable Development Solutions Network(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)が公表したWORLD HAPPINESS REPORT 2013によれば、デンマークが1位、ノルウェーが2位、スウェーデンが5位、フィンランドが7位、日本が43位となっています。このように、それぞれの調査の調査方法はすべて異なるが、北欧諸国が総じて高い順位を記録していることは注目に値すると思います。

 

3-2 将来への安心感と幸福度

 では、こうした幸福度の高さはどこからくるのでしょうか。それは北欧諸国の社会システムが将来への不安を取り除き、ある程度の安心感を与えている点が挙げられます。その事例として、スウェーデンのウプラ市に住むランドグレーンさん夫妻について見ていくことにします。

ランドグレーンさんの家族構成は、夫のマティアス・ランドグレーンさん(31歳)と妻のベンテ・ビヨルクさん(32歳)、そして2歳になる長男のフェリックス君の3人です。夫妻の合わせた収入は月10.2万クローナ(170万円、1クローナ=約17円)と高水準ですが、税引き後の手取り額は約6万クローナ(102万円)と、40%以上が税金で引かれます。これに加えて食費、衣料費、通信費などの生活費(消費支出)でも、外食や衣料品に25%、食品や日用品で12%という高い消費税も負担しています。更に失業保険を含む労働組合費などの支出も考慮すると、前節で触れた50%を超える高い国民負担率となります。それでもランドグレーンさん夫妻は『「確かに税金は高い。でも子育てや教育、ヘルスケアにかかる費用はすべて公共が負担してくれるので、生活出費は十分にカバーできる。非常にいいシステムだと思っているよ」。(下記参考雑誌42頁)』と述べています。ランドグレーン家にとって、公共サービスの充実が生活の安心感につながっていることがうかがえます。マティアスさんの両親もまた、公共サービスによる安心感を享受しているようです。マティアスさんの父親のインゲルさん(66歳)には、公的年金1万5500クローナと、協約年金(労使協約で設定される年金、開始から5年間給付)300クローナ、個人年金2000クローナなど、月に2万2300クローナ(約38万円)もの年金収入があります(注;同雑誌43頁)。一方の母親のラーシュさん(64歳)は市の障害者施設などに携わってきた関係で、市への貢献に対する給付として月4400クローナの収入を得ており、生活には余裕があります。『「将来の心配はまったくしていないよ」(インゲルさん)。(注;同雑誌43頁)』と、こちらも安心感をうかがわせます。

実はラーシュさんは4年前に脳卒中で倒れ、右半身不随、1か月の入院を余儀なくされました。退院後もリハビリに通ったといいますが、この時に負担した医療費は年間で900クローナだといいます。ラーシュさんは今でも服薬を続けていますが、医薬品代も年間1800クローナの限度額以上は負担していません。こうした経験からラーシュさんは『「もっと年を取って、思うように動けなくなっても、市の在宅サービスが世話してくれますから、安心してますよ」(ラーシュさん)。(同雑誌43頁)』と述べています。

また、別の人の話でも、ランドグレーンさんと共通するコメントが見られます。デンマークの男女同権を目指す団体に勤務しているリナ・インヴァーセンさんは『「所得の多い人はかなりのものを払う。所得が少なければあまり払わない。…もし何かが起こっても、今の生活を維持していくことが許される。そこにすごく安心感があるんです」(注;本田下記参考資料1頁)』といいます。スウェーデンのヨガスタジオを経営しているピア・ウォルヴァーグさんは『「ときどきは税金が高いことにイライラすることもありますけど、本当にいいシステムだと思います。たぶんほかの国に行ったらショックを受けるでしょうね」(注;同サイト1頁)』といいます。フィンランドのニーナ・コリアンダーさんは『「税金は全然高いとは思いません。とくに教育にお金がかからないっていうのは大きいと思います。それがどういうことかというと、いろんな人たちが平等に教育を受ける権利があるということです」(注;同サイト1頁)』といいます。

このようなコメントから、公的サービスの充実が生活の安心感につながっていることがうかがえます。また、これを裏付けるようなデータもあります。週刊東洋経済によれば、税金や社会保障などの負担が大きい国は、生活の質が高いという傾向が示されています(43頁、グラフ、国民負担率と生活の質は正比例する)。これらのコメントやデータの意味することは、負担が大きいということは裏を返せば、福祉サービスが充実しているということであり、それが将来の安心を担保することで最終的に高い幸福度へとつながっているのではないでしょうか。もちろん、幸福度というのは個々人の主観による部分もあり、社会システムのあり方がそのまま幸福度に直結するとは言い切れません。しかしながら、前述のような北欧の人々のコメントや国民負担率と生活の質が正比例するグラフを見る限り、将来に対する不安を取り除く社会のあり方が幸福度を高める1要因であることは間違いないでしょう。

まとめると、福祉国家型財政とは、①社会的支出を大きくして(=負担を大きくして)国民のニーズ(=社会保障)を満たしながら増税への合意をとりつけている②受益が大きい分、高負担への反発は小さく幸福度が高い③更に社会保障が充実しているだけでなく、雇用にかかわる社会保障(失業給付、積極的労働市場政策)にも注力し、社会保障と雇用をうまく結合させているので、経済成長とそれに伴う税収増によって財政収支の黒字化も実現、の3つの要素を持った財政であり、これらは総じて「人への投資」を重視した財政のあり方だと言えます。

 

参考文献、資料

・ケンジ・ステファン・スズキ『消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし』角川SSコミュニケーションズ、2010年、12頁、表0-1、表0-2

・「北欧はここまでやる。」『週刊東洋経済』2008年1月12日号、42-43頁

John Helliwell, Richard Layard and Jeffrey Sachs『WORLD HAPPINESS REPORT 2013』22http://unsdsn.org/files/2013/09/WorldHappinessReport2013_online.pdf (閲覧日:2013年10月21日)

・本田直之『北欧現地インタビュー:[社会保障と制度編] 北欧が世界幸福度ランキングでトップにいる理由』http://diamond.jp/articles/-/20642 (閲覧日:2013年10月21日)

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コメント

  • : 2017/2/20(月) 12:04:30 | ゴールデングース 偽物 | 返信する

    この形見の馬の頭(駒形)が国中宮の御神体として祀られている夏の祇園祭には稚児が駒形の御神体を胸に奉持して(久世駒形稚児)乗馬で供奉します。
    ゴールデングース 偽物 http://www.keevoo.com/brand-358.html

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