財政民主主義
財政とは、国や地方自治体などの公共部門の経済活動のことであり、民間部門の財政とは区別されます。しかし、近代市民国家が形成される以前の絶対王政国家などでは、公的な財政と民間金融は一体でした。国王は公債を発行して民間金融業者から借金をし、政治支配のために資金を調達したが、そのツケは過酷な税金の取り立てというかたちで民衆が担うこととなりました。このように、絶対的な権力を持つ国王の時代には、民間部門と公共部門(財政)は一体で、国王などの特権階級が膨大な富を蓄積する一方で、民衆は重税に悩まされていたのです。
このような特権階級による富の蓄積や重税という政治的暴力に対する不満の噴出が、イギリスの名誉革命やフランス革命に代表される市民革命です。市民革命の目的は、第一が租税民主主義の確立です。租税民主主義とは、国王や政府が国民の承認なしに勝手に国民に課税できないようにすることです。第二の目的は、軍事費やその他の民生費を国民の承認なしに支出できないようにすることです。この市民革命を通じて近代的租税制度に基礎をおく公的財政が確立し、財政民主主義の枠組みが確立されました。
財政民主主義の原則は、①国民の租税負担は議会が法律を通して確定する(租税法律主義)②議会が歳入・歳出予算を審議し承認する(予算制度)③議会が決算を審議し、政府の予算執行を監督する(決算制度)④議会が二院からなるときは、下院が優先権をもつ(下院優先)の四つに集約されます。このような財政民主主義の枠組みは、財政を国民の意思に基づいてコントロールするという点で非常に重要な意味を持ちます。
参考文献
・貝塚啓明『財政学[第3版]』東京大学出版会、2003年
・重森曉、鶴田廣巳、植田和弘『Basic現代財政学〔第3版〕』有斐閣、2009年
・橋本徹、山本栄一、林宜嗣、中井英雄、高林喜久生『基本財政学〔第4版〕』有斐閣、2002年