財政の原則
財政とは、国や地方自治体などの公共部門における経済活動のことです。民間部門の企業や家計と同じように、財源を調達し、それをもとに投融資を行い、財産を所有し管理するというような経済活動を行っています。
民間部門の企業や家計との違いを指摘するとすれば、財政は「量出制入」を原則とするという点です。量出制入とは、「出を量って入りを制する」、すなわち、支出が先に決まり、収入はあとから決まるという原則です。公共部門の場合、国民の共同意思決定として、政治過程で決められるため、まずは必要な支出を決めてから、それを賄う収入が決められるのです。一方の民間部門の場合は、収入が先に決まって支出はあとから決まる「量入制出」という原則で動きます。例えば企業を考えると、企業の収入は市場原理で決まるため、市場が収入を決定します。市場でモノが売れれば収入が決まり、その収入をもとにどれだけ人件費や設備投資に回すかという支出を決定します。家計も同様に、収入が労働市場のなかで決定され、その収入のうちいくらを食費や衣料費に回すかという支出を決定します。
このように、現代における経済は、市場経済(民間部門)の原則と財政(公共部門)の原則という二つの異なる原則の経済から成り立っています。こうした経済を混合経済と呼びます。
参考文献
・貝塚啓明『財政学[第3版]』東京大学出版会、2003年
・重森曉、鶴田廣巳、植田和弘『Basic現代財政学〔第3版〕』有斐閣、2009年
・橋本徹、山本栄一、林宜嗣、中井英雄、高林喜久生『基本財政学〔第4版〕』有斐閣、2002年
コメント
わかりやすいです
これを読んで、民間部門と公共部門の関連を知りたくなりました
ありがとうございます。重要な視点ですね。本記事の内容を意識しながら、戦後日本の税・財政のあり方を概観すると、見えてくるものがあると思います。戦後日本の税・財政の概観については、別途書いたはずなので、探してみてください。
※税・財政については、神野直彦さんが参考になります。基本的な内容であれば、『財政のしくみがわかる本』は読みやすいと思います。