失敗の本質
大東亜戦争における諸作戦の失敗を、組織としての日本軍の失敗ととらえ直すことで、現在における様々な組織一般への教訓にしようと試みた書。第一章では失敗の事例研究として6つの諸作戦(ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦)を挙げ、それぞれの作戦の戦略的失敗や過度な精神主義、情緒主義などを検討している。第二章では、この6つの事例の共通点を洗い出し、日本軍の失敗を組織論へと昇華させている。第三章では、各章を踏まえて、日本軍と米軍の組織のあり方を比較しながら、日本軍は自己革新能力に欠けた組織であったことを指摘している。また、日本軍の自己革新能力に欠けた組織構造は現代の組織一般(政治関係や企業など)にも受け継がれている部分があるかもしれないという指摘。
第一章の事例研究の部分は私の戦争や軍事などに対する知識不足もあり、結構読み飛ばしてしまったが、主張したいことは冒頭できちんと述べられているのでそれなりに理解できたと思う。第二章からが圧巻で、第一章で事例を詳細に検討しているだけに非常に説得力のある内容だと思った。進化するためには常に変化しなければならないことを改めて実感した。中でも特に印象的だったのは、「知識の淘汰と蓄積」の節で、組織は環境との相互作用を通じて、生存に必要な知識を選択淘汰し、それらを蓄積するという部分である。知識は基本的に蓄積するものだと思い込んでいたので、状況によっては知識を淘汰する必要もあるのかと気づかされた。成功体験は引きずりがちですが、状況の変化に応じてその都度変化する必要があることを認識した。本書は組織論に焦点を当てているが、個人においても十分通用する内容だと思う。
参考文献
・戸部良一、寺本義也ら『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』中央公論新社、1991年