発生のしくみ① -受精卵から神経胚期までの発生-
発生の仕組みについて①
※発生には、2つの説がある
・前成説・・・17~18世紀に出た説で、卵や精子の中に
個体のもと(ミニチュア)が入っている
・後成説・・・発生初期の単純なもの(未分化)から、だんだんと複雑なもの(分化)に
なっていく
1、受精卵から胞胚期にかけての変化
(1)モザイク卵と調節卵
・モザイク卵・・・将来、体のどの部分になるか(予定運命)が決定している
・調節卵・・・予定運命は発生が進むにつれて、だんだんと決定していく
①クシクラゲの実験
・クシ板(繊毛列)が8列あるのが普通
※2細胞期 → 4列×2個体
分離 =クシクラゲ卵は、モザイク卵と見える
4細胞期 → 2列×4個体
↓
※未受精卵を2つに分けて、それぞれ受精させる → 8列×2個体
=クシクラゲ卵も受精前は調節卵だと考えられる
②ルーの実験(イモリ、2細胞期)
・イモリの卵を焼殺すると、体が半分出来る(半胚)
※これは、一見するとイモリ卵がモザイク卵に見える
・イモリの卵を分離すると、死割球と生割球が出来て、正常幼生が出来る
=イモリ卵は調節卵であることが分かる
2、胞胚期以降から神経胚期にかけての変化
(1)原基分布図(予定運命図)
※原基分布図は、フォークトの局所生体染色法が有名
→・フォークトは、無害な色素で胚を染め分けて、各部の予定運命を調べた
・フォークトは、中性赤、ナイル青などを用いた(拡散しにくく、色落ちしにくい)
(2)分化の決定
※分化の決定の有名な実験に、シュペーマンの交換移植実験があり、
イモリの体色の違う2系統を用いた
①原腸胚初期
・Aのイモリ卵とBのイモリ卵を用意する
・Aのイモリ卵にBのイモリ卵の核を移植する → すると、Bの核は表皮になる
・Bのイモリ卵にAのイモリ卵の核を移植する → すると、Aの核は神経になる
=つまり、原腸胚初期では、まだ予定運命を決定していない
②神経胚初期
・Aのイモリ神経胚とBのイモリ神経胚を用意する
・Aの神経胚にBの神経胚を移植する → すると、Bの神経胚は表皮になる
・Bの神経胚にAの神経胚を移植する → すると、Aの神経胚は神経になる
→①と②からわかること
=表皮になるか神経になるか、予定運命の決定は、原腸胚初期から神経胚初期の間で起こる
(3)形成体と誘導
※代表的な実験に、シュペーマンの原口背唇部移植実験がある
・イモリの原口背唇部を胞胚腔に移植する
・すると、イモリに頭が2つ出来た
・さらに、二次胚の脊索が黒色だった
→この実験からわかること
=原口背唇部は、自らは脊索になると同時に、接する外胚葉を神経管に分化させる
※この働きを誘導といい、この働きを持つ部分を形成体(オーガナイザー)という