生命倫理について考える② -脳死と臓器移植・尊厳死と安楽死の自己決定権-
生命倫理について考えてみます
※そもそも、なぜ生命倫理(バイオエシックス)が考えられるようになったのか・・
→・医療において、患者の考えを無視する医師の権威主義(パターナリズム)が
問題視されるようになったから
・医療技術が発達してきて、生命工学(バイオテクノロジー)などが注目されるようになり
人間の生死や精神状況など、医療において新しい考え方が求められるようになったから
→このような考え方を元に、様々な生命倫理が考えられるようになり、議論がされている
・脳死と臓器移植について
・そもそも、なぜ脳死と臓器移植について考えるのか・・
→医療技術が発達すると同時に、「死」の概念がくつがえったからだと言われている
※昔・・人間の死は、心臓停止、呼吸停止、瞳孔拡散の3つによって
判断されると言われていた
今・・臓器移植をする、ということを考えるのであれば、
脳死も人間の死として認めることになった
※脳死・・大脳を始め、脳幹と呼ばれるところも含めて、全ての脳の働きが完全に失われ、
2度と脳の機能が回復する可能性が無くなった状態のこと
ただし、臓器移植を前提とする場合でしか、脳死かどうかの判定は行わない
→このような流れを受けて1997年に、臓器移植法が作られた
※臓器移植法・・臓器移植について、様々なことを決めた法律のこと
この法律で、臓器移植は、ドナー(臓器を提供する人)が
臓器提供意思表示カード(ドナーカード)や書面などで、
臓器を提供する意思を見せていて、さらに臓器移植に家族が
同意している場合だけ臓器移植を行って良いとなった
→最近では、臓器移植の時には、ドナーかその関係者と
レシピエント(臓器を提供してもらう人)の両方に臓器移植に関して、
しっかりと説明を行いお互いの同意を得ることが必要だと考えられている
=このような行動はインフォームド・コンセントと呼ばれている
※インフォームド・コンセントは、医師のパターナリズムを辞めて、
患者の自己決定権を重視するという考えが含まれていると言われている
→上のような考え方は、自分の将来の治療に関して、
前もって意思を表示しておくべき(例:ドナーカードなど)
という考え方を生み出した
=このような考え方を、リヴィング・ウィルという
・尊厳死と安楽死について
・人間の死について
→人間の理想の死に方は老衰による自然死だと言われている
※このような考え方から医療では、生命を守ることが大切なため、
生命に価値を置く考えが重視された
=この考え方は、生命の尊厳(SOL)を重視する立場に立っていると言われている
→しかし、現代の医学では、新しい考え方が生まれてきた。それが尊厳死と安楽死だった
・尊厳死・・回復の見込みのない病気に関して、死ぬ時期を早めてでも、
苦痛にしかならないような延命措置を辞める考え方
(意図的に死なせるのではなく、単純に延命治療を辞めるだけという考え方)
※尊厳死は、患者の自己決定権を重視していると言われている
・安楽死・・苦痛を避けるために、薬を使うなどして、
意図的に患者を死なせる考え方のこと
→この2つの考え方の根底には、自分の残りの命を充実したものにしたい
という考えがあると言われている
=この考え方は、生命の質(QOL)を重視する立場に立っていると言われている
※ただし、生命の質は、命自体に価値の違いがあると考えているわけではない
・最近の考え方について
→最近は、ヒポクラテスという人が考えた、ホスピス=ケアという考え方が
注目されている
※ホスピス=ケア・・延命措置をしないで、治療よりも介護を重視しようとする考え方
→この考え方は、生命の質を大切にすることができると言われていて、
患者の残りの生活を充実させようとする動きが見られる
ポイント
・現在は脳死は、死とみなされるようになり、臓器移植法が作られた
・移植の時は、ドナーとレシピエントの同意が必要で、インフォームド・コンセントの
意識が根底にある
・自分の治療に関して前もって意思表示をしておくリヴィング=ウィルが重視されている
・人間の死は自然死が理想で、生命の尊厳を重視するが、新しい考え方として、
尊厳死、安楽死、生命の質などがある
・最近はホスピス=ケアなどが注目されている